本文
霞台小学校は、市の東部地域に位置しています。将来の青梅を担う子どもたちが、地元青梅を深く学び、よさを知り、青梅のよさを自分のものにしていく。霞台小学校が取り組む起業家教育について、校長先生にお話を伺いました。
霞台小学校の起業家教育「霞カンパニー」は、「総合的な学習の時間」の取り組みで、年間を通した実践です。郷土青梅を学び、そのよさを体得し、「青梅を世界にPR」を合言葉に、小学校の授業の一環で、模擬会社を設立し会社経営を通して学んでいきます。
起業家教育のスタートとして、まずは青梅市のことを知ることから始めます。青梅のレクチャーを市役所の商工観光課の協力により行っています。「青梅を世界にPR」するための商品を開発していくためには、「青梅のよさ」を知る必要があるからです。ここで、子どもたちは、知らなかった青梅の魅力をたくさん発見し授業の期待が大きくなります。その後、「霞カンパニー」とは何かということを授業し、いよいよ子どもたちが主体となって経営する模擬会社「霞カンパニー」の社長と副社長の選出を行います。
社長・副社長は授業での話し合いの進行はもちろん、社員の役割分担、商品の価格決定や販売数などの最終的な決断を担います。社長・副社長がいかに重要な役割かを事前説明した後、立候補を募ります。子どもたちは真剣に受け止め、立候補を模索します。週末、立候補する子の多くは、社長・副社長を選ぶために、社員の前で実施する「立候補演説」の練習を家族と行い、当日に臨みます。当日は真剣勝負、立候補演説の後、社員の選挙で社長・副社長がその場で選ばれます。
社長、副社長の選出以外でも、子どもたちは真剣勝負に臨んでいます。商品を何にするか、デザインをどうするか、価格をどうするか。すべてが売り上げと会社の経営に直結し、答えは一つです。子どもたちの気持ちの中には、去年のカンパニーを超えたいという思いもあり、さらに本気になります。デザインの決定は、商品評価会として外部の審査員を前にプレゼンテーション大会を行い、審査で選ばれます。選ばれなくて泣く子もいるぐらい子どもたちは真剣にアピールをします。
現在の学校教育の中では、子どもを競わせる機会は減っています。しかし、起業家教育では、互いに競い合います。選ばれても、選ばれなくても、ともにチャレンジし、高めあう経験は必要であり、子どもたちは自ら行動していきます。
一年間を通した授業の流れで大切にしているのは、子どもたちの創造力、行動力、プレゼンテーション能力を発揮させることです。取り組みの先頭に立つ社長・副社長だけではなく、社員の子どもたちにも「自分から行動する」ことが求められます。たとえば、霞カンパニーの商品開発の原資を得るため、先生や保護者に子どもたち自身が出資のお願いするために自ら行動し説明を行います。「なぜ出資してもらうことが必要なのか」子どもたちの言葉できちんと出資に納得してもらうようにプレゼンテーションをします。なかには家族会議を開き、家族が子どもの考えをしっかり聞いて、祖父母が納得し出資してる家庭もあり、自ら努力しなくては、会社に貢献できないことを学びます。
うまく出資してもらえない場合もあります。しかし、自分から動いた経験が、机の上では出来ない大きな学びになります。商品開発は子どもたちの創造力の発揮の場です。グループで考え協議し、一つのデザインを完成させ、みんなでプレゼンテーションを創り上げます。ひとりひとりの行動力も求められます。選ばれるデザインはたった一つで、多くが残念な思いを味わいますが、これもよい経験となります。選ばれたデザインが商品となり、形になったとき、子どもたちの思いは最大に高まります。学校でお金を扱うことに賛否があるかもしれませんが、本物の経験をすることで、子どもが本気になっていくことができます。保護者の方も温かく見守ってくださり、プレゼンテーションの評価会には、審査員として参加していただいています。
この起業家教育を行うためには青梅の地域の協力が重要です。子どもたちが開発する商品は、地元の企業に関わってもらうことで、青梅のよさを実感し、実際に企業の理念や会社の経営、商品についてなど、レクチャー授業も大きな学びにつながります。売り上げの確認、決算の作成、利益の使い道などのお金を扱う部分は、地元税理士会の協力を得て授業を行います。商品の販売も地元スーパーや青梅マラソン事務局、市役所などと連携し、地域とともに活動を行っていきます。
起業家教育の実践に当たっては、これからも青梅の様々な分野の方々にかかわっていただきながら、ともに青梅の未来に向けた起業家教育を進めていけたらと考えています。今年は地元タオルメーカーとタイアップし、市役所、デパートでの販売、「青梅の魅力タオル2021」を完売することができました。利益の使い道はみんなで考え、昨年は学校にテントや図書を購入、社会貢献として青梅市と総合病院に寄付をしました。
1年間の授業を終えると、受け身の姿勢だった子どもたちが積極的、意欲的になっているのを感じます。自分たちが自ら動くことで得られる起業家教育の経験は、普段の授業では学ぶことができない、これからの世の中を生きていくために必要な学びを得る機会となり、将来の青梅を担う子どもたちに身につけてほしい総合的な「生きる力」につながると期待しています。